「私のスポーツダーツプロジェクト」 神奈川県・ダーツYouTuber兼リハビリテーション体育士が挑む福祉の未来 編

 「私のスポーツダーツプロジェクト」は、ダーツを使った福祉活動や交流会、街の活性化など、さまざまな問題の解決に向けてすでに活動をおこなっている「先輩」を紹介する企画です。

 詳細はコチラ。あなたのスポーツダーツプロジェクトのご応募、随時お待ちしております!


 「私のスポーツダーツプロジェクト」今回は、神奈川県横浜市で療育(※1)施設を運営している山口裕輝さん。国内プロダーツツアーJAPANの所属選手でもあります。

 そして、このお顔を見て「知ってる!」という方もいらっしゃるかもしれません。Googleで「ダーツ 投げ方」で動画検索をすると、上位に表示されるのがこの動画。

 ダーツが上手くなりたいと思ったことのある方なら、1度は見ている動画かもしれません。療育施設職員であり、プロダーツプレイヤーであり、ダーツYouTuber! そんな山口選手のスポーツダーツプロジェクトについて、インタビューしてみました。

「山口裕輝さんのスポーツダーツプロジェクト」
・大学で学んだ「スポーツ科学」を世の中に還元したい。一般企業を退職し、リハビリテーション体育士の資格を取得

・放課後等デイサービス
、児童発達支援事業をおこなう療育支援施設「あだぷと」を設立し、ダーツを療育に導入し始める

・今後の野望は、ダーツで地域貢献するために、ダーツでビジネスができる体制を整えること。新しい業態にチャレンジ!

(※1)療育:
障がいのある子どもの発達をうながし、自立して生活できるように援助すること。

「ビジネスとは、人の役に立つこと」という言葉に突き動かされ脱サラ!

 YouTubeの動画などをきっかけに、ダーツが好きな方の間では有名人の山口選手。現在の活動に至るルーツについて訊いてみました。現在のお仕事(療育施設職員)をされる前は、誰もが耳にしたことがある有名企業でサラリーマンをされていたそうです。

– 山口選手がサラリーマンを辞めて、療育支援の道に進むことになったきっかけは何だったのでしょう?
 サラリーマン時代に、働いていた会社の社長さんが言っていた「ビジネスとは、人の役に立つこと」という言葉がきっかけです。
 僕は福岡大学のスポーツ科学部出身で、スポーツと健康について勉強していたんです。社長の言葉を聞いて、自分が勉強したことを人の役に立つビジネスに成長させたい、これが自分の本当にやりたいことなんだ! と思って脱サラしました。

– 会社を辞められて、今のお仕事をスタートするまでの経緯をぜひ教えてください
 会社を辞めて、母校に相談しに行ったんですが「大学院に進んで修士を取る」か、「障がい者支援に特化した学術機関に進学する」かという2つの提案をもらったんです。そこで、障がいをもっている方にも運動で支援ができるようになれば、障がいのあるなしに関わらず誰もがスポーツを楽しめる環境をつくることができる。自分の知識を使って世の中に貢献ができると思ったので、障がい者支援について勉強することを選びました。そこで、リハビリテーション体育士という資格を取得しました。

– リハビリテーション体育士とはどんな資格ですか?
 障がいがある方の補佐として有名なのは理学療法士さんですが、リハビリテーション体育士はまったく違う資格です。厚生労働省が障がい者への体育支援をおこなう専門職をつくるために提案し、大学を卒業・教員免許を取得しており、国立障害者リハビリテーションセンター(埼玉県所沢市)で2年間の科目履修を終えた人のみが持っている資格です。全国で160人強程度しか持っていない資格になります。

– スポーツ科学を専攻していた山口さんにお聞きしたいです。運動・スポーツ・体育はどこに違いがあると思いますか?
 運動:位置の移動(手首を曲げる、ボールが転がる 等)
 スポーツ:運動にルール性が伴うこと
 体育:スポーツに教育の要素が伴うこと
と僕は考えて、さまざまな活動で言い方を使い分けています。個人的には、体育の日がスポーツの日に変わったことについてもちょっと思うところがあります(笑)。

学業を活かして療育施設を開業 療育にダーツを取り入れる

 山口選手が代表を務める【障害児通所支援】リハビリテーション体育「あだぷと」は神奈川県横浜市にある施設で、2017年に開業した運動特化型・体操特化型の放課後等デイサービス(※2)です。また、2018年には児童発達支援事業(※3)も開始しています。

以下の注釈は、あだぷとさんの公式ウェブサイトより説明文を引用しています。
(※2)放課後等デイサービスは、おもに6歳~18歳の就学児童・生徒(小学生・中学生・高校生)が、学校の授業終了後や長期休暇中などに療育目的で通う施設です。
(※3)児童発達支援事業は、おもに小学校就学前の6歳までの障がいのある子どもが通い、支援を受けるための施設です。 日常生活の自立支援や機能訓練を行ったり、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場を提供したりといった障害児への支援を目的にしています。

– 「あだぷと」さんは、お子さんを対象に運動を軸に支援を行っている施設なんですね。最近になり、施設での活動にダーツを組み込んだと伺いました。
 あだぷとは平日毎日開放しているのですが、月・水・金で体育クラスというコースを行っています(火・木は空手クラス)。体育クラスでは、サーキット・マット運動・鉄棒・縄跳び等をおこなっているんですが、最近そこにダーツ(ストローダーツ)を組み込んでみました。 

ストローダーツを楽しむ通所者の皆さん

– ダーツをプレイしてみて、通所されているお子さんや親御さんの反応はどうでしたか?
 お子さんたちは、すごく楽しそうに取り組んでいます! 親御さんからの心配の声も特にありません。当たり前の話ですが、通所されているお子さん方が安全に時間を過ごせるようスタッフ一同配慮し、親御さんとの信頼関係が出来上がっているので、先が尖っているダーツであっても安心してお任せいただいています。

– ダーツをプレイする時間のときに、特に注意していることはありますか?
 参加するお子さんのグループ作りですね。発達障害とひとくくりに言っても、その特性はお子さんによってさまざまです。例えば、多動傾向が強いお子さんは怪我をしないようマンツーマン対応したり、障がいの特性が似ているお子さんを同じグループにしたり、スタッフと事前に打ち合わせをしてお子さん方が安全に楽しめるよう工夫しています。

– 療育にダーツを取り入れてみて、山口選手の率直な感想を聞かせてください
 一番に感じたのは、「ダーツは療育に向いている」ということです。明確にルール(順番に投げる、一緒にプレイしている相手を邪魔しない、協力してプレイする等)があり、一緒にプレイしている相手とコミュニケーションを取らなくてはいけない。発達障害のあるお子さんたちが、他人との距離感を学ぶのにとても良いと思っています。
 他人との距離感や雰囲気を「読む」ことが苦手だという発達障害のお子さんは多いです。小さい頃から療育によって他人との距離の取り方を覚え、何度も反復することで「こういうことはしてはいけない」「これをしたから相手は怒ってしまったんだ」といったように、何度も経験することで距離感を学習するんです。
 まず体を動かしてダーツを楽しみつつ、一緒にプレイしているお友達と共に「経験」を繰り返して成長していく。ダーツは療育を行う上で、お子さんの体にも心にも良い効果があると考えています。大人になって余暇の時間を過ごす場合でも、コミュニケーション上でトラブルを防ぐことにも役立つと思っています。

ダーツをビジネスに 「支援を続けるため」のマネタイズ

 自分の知識を活かし、療育をいう分野で貢献している山口選手。「あだぷと」での活動や、それ以前にも行っていた福祉の仕事を経て、マネタイズ(収益化)について思うところがあるそうです。

– 療育支援も含め、福祉活動のマネタイズについて、一家言あると伺いました
 過去に福祉支援の分野で働いてきて思ったのは、支援を続けるためには予算が必要だということです。世の中に貢献したい、支援を行いたいと思ってもマネタイズがしっかりされていなければ支援自体が難しいと僕は思っています。

– 世の中に貢献しながら、自分たちの活動で収益を上げていこうという考え方は、持続可能な開発目標(SDGs)とも通じるところがありますね
 その通りだと思います。自分がジリ貧になっては、支援が続けられません。まずは事業で収益をあげること、そしてその収益を担保に世の中に支援という形で還元すること。このサイクルは本当に大切だと思っています。

– 今後、山口選手が考えている施策などはありますか?
 ひとつは、いま現在も行っているんですが個人へのダーツレッスンについてさらに力を入れていきたいです。実は、脱サラして会社を立ち上げた当初忙しすぎてダーツをする時間がなくなりダーツを引退しそうになったんです。最初にYouTubeの話を出してもらったんですが、動画投稿を始めたきっかけはまさにそれで、ダーツを引退しないために無理やりダーツを続けようと思って自分に課したノルマでした(笑)。
 チャンネル登録者数が全然伸びなかったらすぐYouTubeを辞めようと思ったんですが、意外に評判がよくて、個人レッスンを始めたり動画から収益を得ることもできるようになりました。ダーツを好きになって動画を何度も見てくれたり、個人レッスンを申し込んでくれたりすると、それが僕の支援活動の元手になります。がめつい! と思う方もいるかもしれませんが、お金がないと福祉支援や地域貢献はし続けることができません。
 もうひとつは、来年度(2021年春頃)から、新たな業態の運用を始めようと準備を進めています。「あだぷと」ではお子さんを対象に支援をおこなっていましたが、新業態の施設では介護予防の高齢者の方や中途障がい者(※4)の方のリハビリテーションとしてダーツを活用できる環境を作りたいと思っています。

(※4)先天性の障がいではなく事故や病気などを理由に障がい者になった方を指します。

– 最後に、今後の活動についての意気込みをお願いします
 ダーツを使ってマネタイズする方法を確立させて、ビジネスとして運用できるように頑張っていきたいと思います。何度も言いますが、療育や福祉支援をするためには予算を確保しつつ、支援を「し続ける」ことが大切なので。今後もさまざまな支援活動を継続できるよう、ビジネス面での新しい挑戦もどんどんしていきたいと思っています!

山口裕輝さんのダーツ×福祉支援×ビジネスを常に考えたスポーツダーツプロジェクト。今後もより多くの方に注目してもらえるよう、当プロジェクトも協力していきたいと思います。取材にご協力いただきました山口さん、本当にありがとうございました!

スポーツダーツプロジェクト事務局では、どんどん「先輩」を紹介して、ダーツがこんなに活用されているんだ! ということをPRしていきたいと思っています。
企画の詳細はコチラ。あなたのスポーツダーツプロジェクトのご応募、随時お待ちしております!

ダーツを使った社会貢献や、地域活性化の活動をこれからはじめたい!という方の支援企画も実施しています。詳細はコチラ。「ダーツライブゼロボード」111台配布企画へのご応募も、随時お待ちしております!

この記事を書いた人

へんしゅうちょう

へんしゅうちょう

編集長に任命され、ありがたく拝命したところ、名刺をよく見たら役職名が「いぶりがっこ編集長」でした。出身地はお察しください。米がうめぇ。